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2012年 12月 11日
テオ・アンゲロプロス監督の映画「狩人」を観た。
忙しかった一週間の仕事を終えた金曜日の夜、 なんとなく気持ちのテンションが下がらなくて、 まっすぐ帰りたくないときってない? それで、帰り道の途中にある映画館に寄り道した。 ギリシャの歴史についての知識もなく、 アンゲロプロス監督の映画を観るのも初めてという私。 仕事で疲れがたまっているうえに、 急いで食べたドトールのクロックムッシュで 程よい腹具合とくれば、当然襲ってくる眠気。 3時間の映画のうち、1時間くらいは夢の中だった。 でもね、でもね、「狩人」という映画自体、 どこまでが現実なのか回想なのか幻想なのかわからない映画なの。 1976年の大晦日、6人の狩人が雪の中で死体をみつける。 それは、1949年の内戦兵士のものなのに、なぜかまだ温かい。 その死体を前に憲兵に事情を聞かれながら、6人がそれぞれ 現実とも非現実ともつかない過去を証言していく。 そういう話なのだが、 いつも天気が悪くて、 明るいエーゲ海イメージのギリシャから程遠い。 とはいえ、今年経済危機でニュースになった あのちょっと狂気をはらんだような国民性に 通じるものがある感じがした。 霧の中を赤い旗を掲げた小舟が何艘も何艘も 粛々と進んでいく光景など 印象的なシーンがたくさんあった。 小難しいことはわからなかったし 眠かったけど、それでも観てよかったあ。 今年のベスト3にランクインだわと 思いながら帰路についた。 ああ、後で調べたら、とんでもない名作らしいのだけれど。 なぜ、急にアンゲロプロス監督作品を見ちゃったのか。 今をさかのぼること30年あまり。 OL1年生の私は某メーカーで社内報の編集をしていた。 海外部門のF部長は、頼めばあっと言う間に原稿を書いてくれる 社内報編集者にとって 大変便利な人だと先輩から教えられた。 小柄なF部長は水戸黄門をせわしなくした感じで いつもシャカシャカ急ぎ足で歩き周り、 嫌われ者のS常務と大きな声で言い合いをしていた。 話上手で、いろいろな国のことに詳しく、 たくさんの本を読み、映画や演劇について語り、 かっこいいとはほど遠いけど、女子社員にわりと人気があった。 満州からの引き上げを経験し、 東大卒業後いくつもの大企業を経て、 当時300人規模の中小企業だった 私のいた会社に中途入社した人だった。 そして、テオ・アンゲロプロス監督の 「旅芸人の記録」が大好きで熱く熱く語っていたっけなあと 映画館のポスターを見て思い出したのだ。 10年あまり前に、治療を拒否して、 壮絶な自宅闘病の末亡くなったF部長が、 突然、私のところに降りてきて 「どうだ、言った通り、テオは良かっただろ」と にんまりしているような気がした夜だった。 いいものを見せてくれて、ありがとー、F部長。 あなたに出会えて得しちゃったね、私。
by tampopotai
| 2012-12-11 12:00
| おおもりさらだ
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Comments(2)
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からておばば
at 2012-12-19 05:29
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ご無沙汰です。
なんて文化的な、素敵な寄り道!そしてF部長さんとの思い出の暖かいこと。 テオ・アンゲロプロス監督自身が今年1月に交通事故で亡くなってたのね(と、急いでWebで見て知りました) 年の暮れは、今年鬼籍に入った人たちを振り返る時期でもあるし、それで、降りてきてくださったのでは?私にはたった57歳でカンクロウ君(「勘三郎」を襲名したのは知ってるけど、それは、彼のお父さんのこととしか思えない私)が亡くなってしまったのが、大ショックでした。 それにしても、長距離飛行機でしか映画を見ない私としては、この間のアフリカ出張で、結局何も観ずじまい、残念でした。なにしろ往復とも夜行便だったし、ヨーロッパからナイロビは東京よりずっと近くて、8時間ぐらいしかなく、少しでも休むことが大事と思ったので、IceAge4もBatmanのThe Dark Knight Risesもあきらめました。 来年はもう少し文化的な生活を目指したいけど…
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by
tampopotai at 2012-12-19 11:49
私の周辺でも大きかった勘九郎ショック。
からておばばさん、遠くジュネーブでぷるぷるしてたんだね。 特に歌舞伎好きではなくても、失ってみてわかる意外な存在感でした。役者としての色気が半端じゃなかったよねえ。合掌。 ところで、飛行機の映画って偏ってない? やっぱり「人生について深く洞察する文芸大作」系より 「ひとときの娯楽を提供する人気作品」系が王道でしょ。 出張や旅の途中で重た〜いもの見て、 暗い気持ちになってどうするってのはよくわかるけど。 これは、長距離列車発車駅のKIOSKでの本の品揃えと共通するものがあるね。 からておばばさんは、普通の生活自体が十分文化的なのよ。 無理して意識して文化してる私と比べたら、その平均値っていうか、基準値っていうかが最初からすごく高いと思う。 たくさんの言語をあやつり、大陸を股にかけて移動し、 190cmの息子たちを叱りつける生活なんて、 かっこよすぎるでしょ! そのかっこよすぎるおばばさんと同級生であったことは 私の自慢です。 友達から教えてもらったポルトガル語でご挨拶。 Ate logo!
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